米州開発銀行(IDB)グループと国際協力機構(JICA)は、経済回復及び社会包摂協力(Cooperation for Economic Recovery and Social Inclusion(CORE))プログラムの下に行われる協調融資を10億ドル増額するための協力覚書(MOC)に署名しました。この増額によってプログラムの資金規模は40億ドルに拡大、その期間は2028年12月まで延長され、IDBグループと日本政府との間の長期間にわたるパートナーシップが更新されることになります。 今回のCOREプログラムの拡充により、質の高いインフラ、災害リスク削減、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、貧困削減及び気候変動対策への協調融資と出資に利用可能な資金が大幅に拡張されることになります。 2011年に設立されたCOREプログラムは、当初、JICAからの10億ドルの資金によって中米とカリブ地域における再生可能エネルギーとエネルギー効率の向上を図ることを目指したものでした。その後、このプログラムは3倍の資金規模に拡大され、対象セクター及び対象地域も拡充されて、中南米カリブ(LAC)地域全体をカバーするものとなっています。 イラン・ゴールドファインIDB総裁は以下のように述べました。「我々と日本政府及びJICAとの間のパートナーシップの礎であるCOREプログラムの拡張を歓迎します。この協調融資によるパートナーシップは、我々がLAC地域のニーズを満たしていく上で、非常に効果的かつ革新的な支援方策となっています。今回開かれた新たな章(Chapter)は、このパートナシップを更に強化するものとなるでしょう」 田中明彦JICA理事長は以下のように述べました。「IDBグループとのパートナーシップは、JICAにとって非常に重要な意義を持つものです。今般のCOREプログラムの拡充は、目標額を40億ドルに増加させ、我々がLAC地域に対して協調融資の資金を提供することを可能とするものであり、その合意に署名することを喜ばしく、また誇りに思います。JICAは、IDBグループとの協力関係を深化させることにより、LAC地域の更なる復興と成長に引き続き貢献してまいります」 COREプログラムの下で実施されてきた様々な案件の一例として、ニカラグアの地方や隔絶された地域における効率的かつ持続可能な電力サービスへのアクセスを向上させる案件があります。パラグアイでは、同国で二番目の規模の大都市圏であるシウダ・デル・エステ都市圏にお いて、JICAとの協調融資により安全且つ効率的な上下水道サービスを提供しています。エネルギー効率の高い上下水道施設を設置、改装することでこの地域の生活環境が改善されました。 更に、COREの枠組みの下で、IDBインベスト及びIDB Labとの協働も促進されました。例えば、JICAとIDB インベストは、ブラジルの健康技術企業であるDr. Consultaに対し2千万ドルの投資を協調して行いましたが、これはJICAにとってLAC地域における初のエクイティ投資案件です。更に、JICAはIDB Labともに、ペルー最大の協働組合であり日系人が出資しているABACOへの支援を実施しました。これは、JICAにとってペルー向けの初の海外投融資案件になります。また、JICAとIDB Labとの協力には、LAC地域の開発課題に取り組むことを目指す日本のスタートアップ企業の支援をするツバサ(TSUBASA)プログラムがあります。2021年度に8件、2022年度に11件の合計19件が採択され、潜在的な現地企業とのマッチングやビジネスプラン策定における支援が加速されました。
協調融資を増加させるための協力覚書に署名したイラン・ゴールドファインIDB総裁と田中明彦JICA理事長 米州開発銀行(IDB)グループについて IDBグループは、中南米カリブ(LAC)地域に対する開発資金の主要な提供者です。IDBグループは、資金面でのソリューションや開発に関する専門的知見を官民セクターの相手方に提供することにより、人々の生活の向上に貢献しています。IDBグループは、60年以上にわたって政府と共に働いてきているIDB、民間部門を支援するIDB インベストと、より包摂的な成長を可能とするための革新的手法を試すIDB Labから構成されています。詳しくは、IDBのHPのバーチャルツアーをご覧ください。 ゴールドファイン総裁は、上智大学で講義を行いました。その中で、ゴールドファイン総裁は、LAC地域におけるIDBの役割、優先分野及びビジョンにつき、自身の見識を披露しました。また、ゴールドファイン総裁は、LAC地域の開発目標やIDBにとっての重要な盟友であり支援者である日本とのパートナーシップの重要性を強調しました。加えて、IDBにおけるインターンシップに関する上智大学との合意と、LAC地域のために働くことに関心のある日本若者や学生にIDBが提供するキャリア形成の機会についても強調されました。 (以上)